2022年10月5日(水)にMeta日本法人 Facebook Japan主催イベント「House of Instagram(以下、HOI)」が開催されました。

本イベントのメインセッション『現代に求められる「価値共創マーケティング」とは』では、現在の消費プロセスの変化やそれがマーケティングにもたらす影響、今後ブランディングに求められることなどが紹介されました。第一弾となる本稿では、今後マーケティングに携わる方にぜひ知ってほしいと思ったポイントをまとめてお届けします。

Text / ソーシャルメディアラボ編集部 肘井絵里奈

 

スピーカーの紹介

鹿毛 康司 氏
株式会社かげこうじ事務所/代表取締役 マーケター クリエイティブディレクター

吉沢 雄介 氏 
デロイトトーマツコンサルティング合同会社/モニターデロイト パートナー

倉迫 有沙 氏 
Facebook Japan/マーケティングサイエンスリード

顧客の「価値」の捉え方は変化している

価値共創マーケティングを理解するには、まず新しいマーケティング領域について理解する必要があります。この表は従来と現在のマーケティングの違いを表したものですが、顧客の価値の捉え方は、交換価値から文脈価値に変化しています。

従来は、ブランドが価値を定義し、そのプロダクトを金銭と交換する時点で顧客が価値を享受するとみなされていました。しかし現在は、「文脈価値」すなわち、プロダクトが使われる瞬間、顧客自身が置かれた文脈に応じてその体験を価値として捉える時代に変化しました。

吉沢「例えば、動画のサブスクリプションサービスであれば、いつお金を払ったかはほとんど意識しないですよね。でも、自分の生活の中で好きなタイミングで好きなものを見ることで、楽しさや息抜きといった価値を感じている。顧客がそれぞれの文脈で消費して価値を享受しているのが特徴的です」

コト消費と同じだと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、コト消費のさらに先の、コト消費に対してそれぞれの顧客がそれぞれの視点で価値を見出している状態が、今回紹介されている新しいマーケティング領域になります。

消費者のコミュニケーションも変化している

デジタルやソーシャルメディアの発達によって、消費者のコミュニケーションにも変化が起きています。鹿毛氏は、この変化を「蛇口」に例えて分かりやすく説明していました。

戦後の高度経済成長期のマーケティングは「蛇口から流れる水を顧客に浴びせる」ようなもので、企業は自分たちが決めた価値を一方的に顧客に届け、顧客も与えられた情報をそのまま受け取って購買行動を行っていました。画像では同じ顔の写真が顧客として示されていますが、顧客も今のように多様なニーズを表出させる機会はなく、多くの人が企業の想定する行動を取ってくれていたのです。これが従来のマーケティングと消費行動になります。

一方、現在は消費者が自ら発信できるようになり、消費者が多様な価値観や購買行動を持っていることが見えるようになりました。そして、そうした消費者に対して情報を届けようとした場合、上からではなく横から、つまり消費者と同じ視点で情報を届ける必要があります。

鹿毛「蛇口から出た水は、消費者によって様々な価値に変換、発信されます。消費者の数だけ価値が存在し、それを発信し合う中でどんどん価値は増えていき、やがて渦になる。この不思議な現象は、巷では『拡散』や『バズる』等という言葉で表現されますが、このようなコミュニケーションを経てモノが売れるのが今の時代です」

現在のマーケティングにおいて、企業が決めた価値を一方通行に発信するのでは消費者には響きません。企業も消費者と一緒に渦に飛び込んで、同じ目線で価値を交換し合うことで、価値は膨らみ、また広がっていきます。

目先の数値に惑わされないことが大事

企業を取り巻く環境が変化し、価値共創マーケティングに取り組む必要性が高まっていることはご理解いただけたと思います。しかしながら価値共創マーケティングには課題もあります。それは、短期的な成果が見えづらいことです。

顧客が商品やサービスを体験した瞬間に価値が生まれるという文脈価値に消費行動がシフトしているため、視聴率やエンゲージメント率といった従来の指標だけで効果を見るのが難しくなっています。

また、消費者の感情の動きも早いため、前回成功したものがまた成功するとは限らず、常に今見ている指標が正しいのか疑いながら進むことが大事になってきています。

短期的な定量データとしての成果は見えづらいですが、昨今ブランドエクイティ(ブランドの無形の資産価値)が注目されているように、消費者の消費行動に合わせてマーケティングを行っていれば、長期的に見れば必ず成果が出ると考えられます。目先の数値に惑わされず、ブランドエクイティを高めていく視点が重要です。

価値共創マーケティングのフレームワーク

最後に、価値共創マーケティングのフレームワークを紹介します。

こちらはモニターデロイトが作成したフレームワークになります。

従来のマーケティングファネルのように、上から下に展開するのではなく、顧客と企業が横並びに存在して、真ん中で交わり合うところが特徴として挙げられます。価値共創マーケティングにおける、企業と顧客が相互に情報交換を行いながらお互いに価値を高めていく在り方が表現されています。

また、顧客の上に従来のファネルが位置しているのも重要な点です。企業としては、顧客と価値を高め合うだけでなく、情報を探している人や求めている人に届くように価値を広く伝えていくことも大事な活動です。

広く伝えていく際に有効なのが、価値共創マーケティングによって生まれた「顧客視点での新たな価値」です。企業発信の価値だけでなく、共創によって認識、発信された価値はよりその時々のニーズに合っており、顧客に響きやすい性質があります。それらの価値を伝えるマーケティング活動によって、従来とは異なる効果的なコミュニケーションが行えるようになります。

告知

本記事はイベント全体のほんの一部であり、紹介できなかった部分がたくさんございます。
House of Instagram Japan 2022のハッシュタグ「#インスタ公式セミナー」で検索いただくと、他セッション内容やイベント参加者のリアルな感想などが閲覧できますので、ぜひチェックしてみてください。

また、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社より「価値共創マーケティング」に関するナレッジレポートが公開されています。

「価値共創」について有識者や企業へのインタビューを通じて展開に向けた種々の仮説検証、調査がまとめられています。「価値共創」とは何か、なぜ今こそ取り組むべきかという問題提起に加え、ケーススタディを通じて取組みに向けた課題と実践アクションにも踏み込んでいます。ぜひご覧ください。

価値共創マーケティング ―デジタルが可能にする顧客との新たな価値の創り方―
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/strategy/articles/md/value-co-creation-in-marketing.html

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情報提供元:Gaiax
記事名:「Instagram推奨!現代に求められる「価値共創マーケティング」とは?【House of Instagram レポート 第一弾】