FacebookやTwitterが日本に入ってきたのは2000年代後半のことでした。リアルタイムでコミュニケーションが取れる便利さやおもしろさが認められていき、ユーザー人口はあっという間に広がっていきました。企業でもSNSの導入が積極的に進められており、いまや重要なコミュニケーションツールとして位置づけられています。しかし、その気軽さ・便利さがネット炎上の引き金になってしまうケースもあるのです。
本記事では炎上発生のメカニズムや原因、実際の炎上事例を取り上げて、SNS運用における炎上対策の必要性を考えていきます。
編集部注:
2023年3月31日:最新情報をもとに、情報を更新しました。
2018年11月21日:内容を一部修正しました。
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1. 炎上とは?
炎上とは、どのように定義されるのでしょうか。
そもそも炎上とは?
炎上とは、インターネット上のコメント欄などにおいて、非難や誹謗中傷などを含む投稿が集中することをいいます。
日本での初の事例としては、某電気メーカーで発生したクレーマー事件( 99 年)が挙げられます。
同事件はマスメディアを介さずに、一般人がインターネットを使って世論を喚起できることを示した一方、企業側にとってはたったひとつの顧客の発言によって存続危機に追い込まれる事態になりかねないという顧客対応の大きな教訓となりました。
炎上は正当な批判に基づくもの以外に、誤解や偏見に基づくものが混在しており、それぞれの是非について判断が難しいところです。
企業にとっての炎上とは?
ガイアックスでは、企業にとっての炎上を「企業、企業に関連する個人、団体、ブランドなどに対し、非難や批判、誹謗中傷などネガティブな言及、リアクションが殺到する状態」と定義しています。
ネガティブな言及には、不当な内容はもちろん、倫理的、法的に問題ない正当な批判、誤解やデマに基づく事実も含まれます。
また、それらの拡散行為、賛同行為、批評、感想なども同様です。
つまり、企業の信用やブランド毀損による損失リスクがある言及すべてが対象になります。
これは炎上ではない
炎上と間違われやすいケースに以下のようなものがあります。
- 一人から寄せられる、大量のネガティブな言及
- ネガティブで多数だが、それぞれ関連性のない言及
- ネガティブな言及が多く寄せられているが、通常と変わらない場合
これらは、炎上とは異なります。
2.SNS炎上とは?
SNSが普及している昨今、炎上はリアルタイム性が強く、一般の人々やネットユーザーたちの感情によって燃え上がってしまう性質も相まって予測が難しいものです。
こうした現状を鑑みると、ソーシャル上の主役は一般ユーザーであり、そこには企業の考え方や意見が通用するとは限らないといえるでしょう。
企業のSNS炎上は2種類
企業のSNS炎上は、次の2種類に分けることができます。
SNSアカウントが炎上
SNSアカウントに対して非難や批判、誹謗中傷などネガティブな言及、アクションが殺到する状態をいいます。
企業が炎上してSNS上で悪い口コミが殺到
企業やブランドに対するネガティブな言及やアクションがSNSプラットフォーム上で大量に出ている状態をいいます。
炎上に参加する人の特徴
どのような人が炎上を仕掛けるかというと、格差に虐げられた人々というイメージが浮かぶ方も多いかもしれません。しかし、実は情報感度やリテラシー、調査能力が高い人、社会的地位が高い人も少なくありません。
その動機の多くが、ストレス発散ではなく「正義感」です。マスコミが「報道の自由」や「社会の木鐸」という正義感で過剰報道をするように、一般人も正義感で炎上を起こすことがあるのです。
また、少数の人が複数の炎上に関わることも多く、実際に炎上に加わる人はネットユーザー全体の0.5%~0.7%しかいないといわれています。
3.SNS炎上の原因
ここからはSNS炎上の原因を説明します。
① 失言・発言内容
災害・差別
大学の特任准教授が差別発言をし、炎上
某大学の特任准教授がTwitterで特定の国の人々を「採用しません」「面接に呼びません」と発言し、人種差別だと非難が殺到しました。
寄付講座で講師も務めていたことから、寄付元の企業からは寄付を停止する方針を示すところもあり、大学からは謝罪と適切な立場表明が行われました。
思想・宗教
不適切な日に「おめでとう」投稿し炎上
某アミューズメントパークのTwitterアカウントから、日本では原爆記念日であったにも関わらず「なんでもない日おめでとう。」とツイートされたことがありました。原因は「うっかり発言」であり、投稿から6時間後にこのツイートを削除し、併せて「不適切な日時の投稿で、不快な思いをさせてしまい、申し訳ない」と謝罪がありました。
同企業はもともと悪気こそなかったはずですが、世間的に「何でもない日」でないことは明らかでした。そして「おめでとう」というふさわしくない言葉が同アカウントのフォロワーやフォロー外のユーザーまでも不快にさせ、炎上にいたりました。
スパム・スポーツ・スキャンダル
オリンピック開会式のアイディアが流出、不適切だと炎上
東京五輪・パラリンピック開閉会式の企画、演出の統括役だったクリエーターが、タレントの容姿を侮辱するような発言を関係者とのLINEグループに投稿していたことがわかり、辞任に追い込まれた例です。
本来LINEグループはクローズドな場ですが、この事例からも不用意な発言はどの場所においてもすべきではないことがわかります。
政治・セクシュアル
女性誌(Web)で自民党の広告をしたことに批判殺到
女性誌の電子版が自民党とコラボした広告企画を行い、「#自民党2019」「#メッセージTシャツプレゼント」の2つのハッシュタグをつけて、どんな世の中にしていきたいかをSNSに投稿するよう呼びかけたところ批判が殺到。
出版社は「政治的な意図はない」と各社にコメントを送りました。
ステマ(ステルスマーケティング)
新作映画の宣伝投稿でステマ疑惑
某映画配給会社が、新作映画の公開に向けて複数のパートナー企業にSNSでの宣伝を依頼しました。本来そのような投稿には広告であることを明記しなければなりませんが、伝達漏れがあったとのことです。
広告にもかかわらず中立的な立場を装って告知する「ステマ」は炎上につながり、企業の信用も失われることになります。
同社は「伝達ミスだった」「意図して起きたことではない」とコメントしています。
薬事法に抵触
サプリメントの効果をうたう投稿が薬事法違反で炎上
健康食品やサプリメント、化粧品、健康器具などは薬事法の規制対象であり、医薬品とは違い「症状の改善効果がある」とうたうことはできません。
某化粧品メーカーは、サプリメントについての投稿に薬事法に触れる投稿が複数あったことで炎上。
その後Twitter公式アカウントで謝罪文と今後の対策を投稿しました。
②非常識な振る舞い
某不動産会社に勤める社員が、ある芸能人が物件を探していたと実名を挙げてツイートしました。業務で得た客の情報を投稿したことに関し、プライバシーの侵害であると批判が殺到しました。すぐに本人の勤務先や本名が特定され、ネット上にさらされました。
ツイート主のアカウントは削除されたものの、ネット上にその情報は残ってしまうこととなりました。
③誤操作・誤送信
某ECサイトのTwitterアカウントより、某歌手へのツイートで「ぶさいく」と個人的な中傷発言をしてしまい、某歌手の個人アカウントから「公式でブサイクと言われちゃった(涙)」とツイート。同日に謝罪文を発表し、「該当のツイートは弊社の見解を示すものではございません」と自社の公式発言であることを否定しました。
真相は不明であるものの、担当者が個人アカウントと間違えて投稿してしまった可能性が高く、アカウント運用における課題が浮き彫りとなりました。
4.SNS炎上のが起こる流れ
上図はネット炎上が発生する一般的なメカニズムを表しています。図の内容を簡単にまとめると、以下のような流れです。
①きっかけフェーズ
まず少数の人が企業や有名人の不祥事などを発見し、自分に身近なSNSで情報発信します。いわゆる炎上の「火種」ともいえる段階です。数あるSNSのなかでもTwitterが問題の温床になるケースが多いといわれています。
② 深堀り・拡散フェーズ
【①】で発信された投稿がTwitter上や2ちゃんねるといった匿名掲示板上で、どんどん共有・拡散されていきます。そうしたリアルタイム性が強いネット空間で情報のアップデートや深彫りが行われ、より新しく詳細な情報(真実ではないものも含む)が展開されていきます。
③ 炎上フェーズ
【②】からさらにまとめサイトやニュースサイトにも展開され、事態が大きくなっていきます。この時点でもSNSで炎上が発生しているといえます。最悪の場合、Yahoo!など最大手ニュースサイトやテレビニュースにも広がり、炎上が大きく・長く続くことになります。
5.企業のSNS炎上事例
企業の炎上事例には、SNS運用が直接関係あるケースとそうでないケースがあります。それぞれ事例を見ていきましょう。
SNS運用が直接関係あるケース
事例①Twitter上の話題に便乗するもやり方を間違え炎上
某玩具メーカーのアカウントで、「#個人情報を勝手に暴露します」として、キャラクターの公式プロフィールと同じ誕生日や星座、身長、体重に加え電話番号をツイート。
子ども向け玩具のメーカーとして不適切という批判が殺到し、後日公式アカウントから謝罪の投稿が行われました。
事例②システム障害で通常運用中の投稿が注目され炎上
某銀行のシステム障害でATMが使えなくなるなどの不具合が起こり、休日だったことから対応の遅さにクレームが殺到しました。
さらにそのタイミングで公式アカウントが「もうすぐひなまつり」とツイートしたことから批判がエスカレートする事態に。銀行は後日、障害対応について謝罪しました。
SNS運用が直接関係ないケース
事例①従業員や取締役など会社関係者の問題による炎上
某銀行行員が娘に、来店した芸能人の個人情報を漏らし、その内容を娘がツイートしました。投稿内容は「母が帰ってきたら○○くん情報たくさん頂こう。住所はざっくりとはさっき電話で教えてもらったし」「この前○○さんの免許証顔写真のコピーをとってきた笑」といったものです。翌日、某銀行は正式文書を発表し、謝罪しました。
事例②悪質な第三者のなりすまし行為による炎上
「現在は某ゲーム会社なる会社で統括的なお仕事なう」と記載されたプロフィールを持つTwitterアカウントから、誹謗中傷する発言がありました。プロフィールには、本名などが書かれており、その情報が拡散しました。
某ゲーム会社は、「情報を元に調査したところ、弊社の従業員ではないことが確認できましたのでお知らせいたします」と発表しました。真実は不明ですが、従業員への「なりすまし」の可能性が高いといえるケースです。
6.まとめ
SNS、ソーシャルメディアはもはや公共空間といっても過言ではありません。
やり取りする情報はすべて流出するものと考えて行動することがトラブル防止・対策につながります。
また、SNSはリアルタイムで見られており、場合によっては記録が残ってしまいます。たとえその時点で投稿が適切と思われる情報でも、後で撤回しようとして間に合わないことが十分にあり得ます。
上記で挙げた事例以外にも、注意すべき観点は多数あり、SNS運用担当者はさまざまな視点から注意・対策を行っていく必要があります。
とはいえ、社会や常識が変化していく中で、内部で炎上対策をどれほど意識していても炎上リスクを完全になくすことは不可能といってもいいでしょう。
ガイアックスではこれまで数多くの企業の炎上対策支援を行ってきました。炎上対策について不安がある、相談したい、という場合はぜひお気軽にご相談ください。
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情報提供元:Gaiax
記事名:「SNSが原因に? ネット炎上のメカニズムと事例まとめ」