従来、企業がユーザーの声を集めるには商品にハガキを付けて返送を求めたり、リサーチ会社に依頼したり、それなりの手間・時間・お金といったコストをかける必要がありました。しかしSNSの普及により、現在では調査コストも大幅に削減可能となり、多くの企業がSNSでユーザーの声を集め、商品・サービスの開発に活かしています。

いまやSNSの活用は企業マーケティングのひとつの柱ともなっています。そこで今回は、ユーザーの声を商品開発に活かすことのメリットや、実際にユーザーの声を取り入れた商品の事例をご紹介します。

    ■目次

  1. SNSユーザーの気持ちを「忖度」し、商品開発に使う企業が増えている!
  2. ユーザーの声を商品開発に活かすメリット
  3. ユーザーの声を取り入れた商品事例
  4. まとめ

1. SNSユーザーの気持ちを「忖度」し、商品開発に使う企業が増えている!

森友学園や加計学園問題の報道で話題となり、2017年の新語・流行語大賞で「インスタ映え」と並んで年間大賞に選ばれた「忖度」。「相手の気持ちを推し量る」、「相手が求めているものが何かを考える」といった意味を持つこの言葉。

つまりユーザーの気持ちを忖度するとは、企業がSNSを通じて収集したユーザーの声、気持ちを推し量り、何が求められているのかを考えた上で、それを商品、サービス開発に活かすということ。さらにその結果をまたSNSで発信していくのがひとつの流れになっています。

今でこそ、多くの企業がSNSを使ってユーザーの声を集めていますが、そのさきがけといえばソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長を務める孫正義氏でしょう。

孫氏は自身のTwitterアカウント上でユーザーからの意見、要望に対して「やりましょう」と返信し、その実行状況を企業サイト内で報告するという取り組みを2010年1月から2014年6月まで約4年半にわたって行ってきました。企業のSNS活用はこの孫氏の「やりましょう」によって活発になったといってもよいでしょう。

http://do.softbank.jp/#done

2. ユーザーの声を商品開発に活かすメリット

ではなぜ企業は、SNSで寄せられるユーザーの声を拾いあげ、商品改札やサービス改善に活かすのでしょうか?そのメリットは大きく分けて2つあります。

(1)自社だけでは生まれない秀逸なアイデアがユーザーから汲み取れる

商品・サービスの開発を行っているのは、当然ながらその道のプロであり、その商品・サービスのすべてを知り尽くしている熟練です。しかし商品・サービスを知れば知るほど、固定概念に縛られてしまい、新たな発想が生まれにくくなるといったケースもあります。

ユーザーの声を聞くことは、いわゆるユーザー目線を知り、自分たちでは気づかなかった視点や価値、改善点などを知る大きなチャンスです。

(2)ユーザーと一緒に作った文脈があり、話題性が醸成されていく

ユーザーの声を活かしつつ商品・サービス開発を進めていく過程をオープンにすることで、ユーザーは単なる消費者から「新たに生まれる商品・サービスの開発者の一員」になります。自分が関わったとなると愛着もわきやすく、より多くの人に知ってもらいたい気持ちが強くなりSNSで拡散してくれるようになります。

またユーザーの声を集めて商品・サービス開発を行ったというストーリーが作られることで、後追いでその過程を知ったユーザーも感情移入しやすくなるといったメリットがあります。

3. ユーザーの声を取り入れた商品事例

ここで実際にユーザーの声を取り入れて開発された商品の事例を3つご紹介します。

①セメダイン:メデタイン

2017年4月1日のエイプリルフールに、セメダイン株式会社のTwitter公式アカウントが和装の男女が手を握り合い「二人がずっとくっついていられますように。」と文字が添えられた画像とともに「祝福用セメダイン、『メデタイン』ができました。おめでたい二人が、ずっとくっついていられますように…」とツイートしました。


これが反響を呼び、商品化が決定。クラウドファンディングを使って製品を販売しましたが、わずか4時間で目標額を達成しました。


②キングジム:円周率ノート

2017年3月14日の円周率の日に、株式会社キングジムのTwitter公式アカウントがボツになった商品として、罫線が円周率になっているノートをツイートで紹介。


リツイートが1万件を超えるほどの話題になったことで、ロフトの文具企画開発担当者がキングジムに商品化を提案。3ヶ月後の6月23日には、銀座ロフトのオープン記念として表紙が緑と白の各色を314冊限定で、314円の特別価格で販売し即日完売。その後、全国の店舗でも取り扱いを開始しました。ちなみに通常価格は税込み411円となっています。


③ファミマ:忖度御前

2017年11月10日、株式会社ファミリーマートのTwitter公式アカウントが、その時点で今年の流行語候補になっていた言葉を商品化するとツイート。「忖度」がよければ「いいね!」と「けものフレンズ」がよければ「リツイート」と呼びかけたました。


その結果、けものフレンズの約30,000リツイートに対し、忖度のいいね!が約60,000いいねと約2倍の差をつけ、3日後の11月13日に忖度をテーマとした高級弁当、「忖度御前」を12月1日から発売することが決定しました。おかずのラインナップを細かにつぶやくなど、商品発売にむけて盛り上げる工夫もされています。


4. まとめ


SNSを活用して商品・サービス開発を行うことのポイントは、1から10まですべてをユーザーにゆだねるのではなく、アイデアや開発過程をSNSで公開し、それに対するユーザーの反響を見ながら進めていくことです。

商品・サービス開発ありきではなく、あくまでユーザーの反響を聞き、ユーザーとともに作り上げていこうという姿勢で臨むことが、魅力的な商品・サービス開発を生み出すことにつながっていきます。

情報提供元:Gaiax
記事名:「消費者の声を忖度する! SNSを活用して商品・サービス開発を行った事例まとめ