北海道から沖縄県まで、沿岸の高台にはレーダーサイトが28か所に設置。日本の防空の目であり耳です。ただ、レーダーサイトは地上設備なので、軍事目標として最初に狙われます。これをカバーするのが早期警戒機E-2Cと早期警戒管制機E-767です。地上と空中から防空識別圏に入ってくる国籍不明機を24時間体制で監視しています。

スクランブルはDEPにコンタクトしない

これらの情報を集約し管理しているのが、全国に4か所ある防空指令所(DC)です。警戒網にアンノウン(国籍不明機)が検知されると、防空指令所は全国7か所の戦闘機が配備された基地で24時間、対領空侵犯措置のために待機しているアラート機(戦闘機)に出動命令を下します。

各基地には、武装した4機のアラート機が待機していますが、その内の2機は5分以内に離陸できるようにパイロットは、飛行装具をフル装備でスタンバイしているのです。

2機のアラート機は、滑走路端にあるアラートハンガーから滑走路に向います。その際、GNDではなく、いきなりTWRに開局。TWRから離陸許可を得るなりスクランブルしていきます。そしてDEPにコンタクトすることなく、TWRが指定したGCIの周波数に移るのです。

スクランブルは離陸直後にGCIに変更

スクランブルは、TWRから始まって離陸直後にGCIに変更されるのが特徴。管制の手順を無視してでも、アンノウンへの接近を急ぐためです。なお、スクランブルの訓練では手順通り、最初にGNDに開局します。管制の流れから、スクランブルが本物か訓練なのかを聞き分けることが可能です。

アラート機は、GCIによって地上からレーダー誘導され、国籍不明機に接近していきます。実は、音声による誘導は減少傾向にあります。データリンク装置による戦術情報のデータ表示が行われているためです。とはいえ、国防の最前線。機材トラブルに備えて、バックアップ機能としての音声誘導がなくなることはないでしょう。

国籍不明機に近づくと、領空侵犯をしないように無線で退去通告を行います。その際の周波数は、国際緊急用の121.500MHzと243.000MHzです。無線による退去通告は英語がベースですが、昨今の世界情勢から中国語やロシア語でも行っています。(文/さとうひとし)

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情報提供元:ラジオライフ
記事名:「スクランブルした戦闘機が退去通告する言語は?