NHKのテレビ放送のみ受信ができないようにするフィルター「イラネッチケー」は、取り付けることでNHK受信契約が不要になるかどうかが何度も裁判で争われてきました。そのひとつが、イラネッチケーをアンテナ一体型として取り外しを難しくしたケースです。この裁判に対して、裁判所が出した判決はどのような内容だったのでしょう。
イラネッチケーを内蔵したアンテナ
NHKのテレビ放送で使われる周波数だけを帯域フィルターでカットし、NHKテレビ放送のみ映らなくする「イラネッチケー」は、事実上NHKとの受信契約を拒否するために作られた商品といえます。しかし、イラネッチケー設置に関わるNHKとの裁判では、いまのところ視聴者側の敗訴が続いています。
そうしたなか、東京高裁で2021年2月、あるイラネッチケー関連の裁判が確定しました。このケースは、関西のホテルがイラネッチケーを内蔵したアンテナを屋上に設置し、NHK受信契約の解約を申し入れたことが始まりでした。
NHK側は、専門業者を雇いホテルの受信状況を調査。ホテル屋上までNHKテレビ放送の電波が届いている一方、ホテルの客室ではNHKテレビ放送が視聴できないことがわかりました。ここまで確認した上で、NHKはホテルへ地上契約分の受信料を客室数分だけ支払うよう裁判を起こしたのです。
イラネッチケーの構造を無視した判決
裁判では、NHKはホテルに設置されたテレビはアンテナさえ接続すればNHKが受信可能な状態にあり、アンテナも一旦はテレビ放送の電波をキャッチしたうえでNHKテレビ放送のみ減衰させているだけなので、NHKテレビ放送は「受信」していることになるという主張をしています。
一方、ホテル側はアンテナにはマッチング回路とフィルターを一体にした基板が取り付けられ、NHKテレビ放送が受信できないと主張。テレビ放送の受信に使われる八木アンテナは、設計によるもののマッチング回路がないとうまく機能しないことがほとんどで、ホテル側の主張は説得力があるように見えます。
しかし、2020年3月に出された東京地裁の判決では、NHKの主張は採用しなかったものの、マッチング回路とフィルターを一体にした基板を外せば受信できるのでNHK受信契約は有効という判断となったのです。ちなみに、基板を外した状態で本当にテレビ放送が受信可能かについての実験は行われていません。
東京地裁の判決に対しホテル側は控訴したものの、2021年2月の東京高裁判決は東京地裁判決を追認するものでした。なお、ホテル側は上告をしなかったため、東京高裁の判決が確定しています。
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情報提供元:ラジオライフ
記事名:「イラネッチケーでNHK受信料裁判に勝てるのか?」