NHK受信契約は、自宅にテレビがなくてもテレビが映るカーナビがある自家用車を持つと結ぶ必要が出てきます。とはいえ、自宅でNHK受信契約を結んでいれば自家用車も同じ世帯扱いになり追加契約は不要というのが現在のNHK受信契約です。しかし、昭和のある時期まで、自宅と自家用車は別々にNHK受信料を支払っていたのです。

NHK受信料がカーラジオと自宅で別々

NHK受信契約の内容を定めた「日本放送協会放送受信規約」は、受信料が変わるたびに変更されるほか、さまざまな受信料の免除・割引制度などが導入されるたびに細かく変更されてきました。しかし、現在の受信契約の基本となる内容が定められたのは1968年4月1日に行われた改定になります。

じつは同じタイミングで改正放送法が施行され、ラジオのみ受信する契約が廃止されることになったのです。この放送法の改正案は、前年の1967年に開催された国会で議論されましたが、議事録を読むと現在から考えると意外な点が議論されていることがわかります。

それは、カーラジオやカーテレビに関するもので、ラジオにNHK受信料が存在した時代は、カーラジオと自宅では別々にNHK受信契約を結ぶ必要があったのです。1967年当時、自動車の普及台数は300万台以上となり、自家用車が珍しいとはいえませんでした。しかし、贅沢品だった時代の規定がNHK受信契約で続いていたのです。

NHK受信料で自家用車も同一世帯と明記

テレビを内蔵する自家用車は当時まだ登場しておらず、ラジオのNHK受信料を廃止することで自家用車分のNHK受信契約を結ぶ必要はなくなりました。とはいえ、将来テレビ内蔵の自動車が登場することは容易に予想できるため、NHK受信契約にも自家用車は自宅の一部とみなすといった内容の規定が設けられたのです。

「NHK年鑑(1967)」には、1968年3月以前のNHK受信契約の内容が掲載されていますが、受信契約について「受信契約は受信機の設置場所を単位とする」としたうえで、同一住居内に複数受信機がある場合は例外として1契約で済むといった規定になっています。

しかし、1968年4月以降のNHK受信契約では「放送受信契約は世帯ごとに行うものとする」と変更。さらに、住居だけでなく自家用車も同一世帯とカウントすることが明記され、現在のNHK受信料にもこの考え方が引き継がれているのです。

興味深いのが、先ほどの国会の議論では、自民党以外の野党議員からカーラジオのNHK受信契約廃止に異論が出されている点です。その発言を追っていくと、自動車は贅沢品だという考え方が出ており、1967年当時もこの点で意見が分かれていたといえるでしょう。

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情報提供元:ラジオライフ
記事名:「NHK受信料は自宅と車それぞれ契約が必要だった