香港の名優アンソニー・ウォンが、香港に住む難民の少年と心を通わす姿を描く、感動のヒューマンドラマ 『白日青春-生きてこそ-』が上映中です。

『インファナル・アフェア』(2002)『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』(2008)『淪落の人』(2018)等に出演する香港を代表する名優アンソニー・ウォンがワケあって息子と距離のある孤独なタクシー運転手チャン・バクヤッ(陳白日)を演じ、台湾の第59回金馬奨で最優秀主演男優賞を受賞。このベテランの大スターを相手に堂々とした芝居をしたのが、本作が初めての映画出演となるパキスタン出身で香港在住の少年サハル・ザマン。難民申請をしたパキスタン人の両親の下、香港で生まれた少年ハッサン(香港名:莫青春(モク・チンチョン))役を演じ、第41回香港電影金像奨最優秀新人俳優賞を10歳で獲得しています。

偶然とはいえ自身の起こした事故でハッサンの父アフメドを奪ったバクヤッは、突然父を失ったハッサンを案じ、警察に追われる身となった彼の逃亡を助けます。互いの関係と共に、世代や民族の違いを背景にした、香港ならではのシーンが描かれた本作について、アンソニー・ウォンにお話を伺いました。

――本作とても素晴らしかったです、ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。僕は「秋(あき)」という日本でのニックネームがあって、これは僕の黃秋生という名前からとっています。なので、(自身のことを呼ぶのは)アンソニーでも秋でも良いですよ。

――素敵なニックネームですね!嬉しいです。まずは、この映画のプロットや脚本を読んだ時のお気持ちを教えてください。

脚本を読んでまず感じたのは、良いストーリーでありながら、話につじつまが合わない所もあるな、ということです。監督はマレーシア出身の方なので香港人の暮らしだとか習慣が分からない部分も多かったと思うんですね。脚本を読んだ後に監督と早速会議を開いて、直してもらうこともありました。撮影現場でも、たとえばビーチのシーンなんかは、香港人からすると、ちょっと違うなと思う部分もあったので、それを伝えて臨機応変に対応してくださいました。

――監督はお若い監督で、アンソニーさんはベテラン俳優さんですが、そうやってコミュニケーションを取りながら進められて行ったのですね。

監督は本作の脚本も手掛けていますが、僕の仕事は脚本に描かれている人物を表現して見せるっていうことなんですよね。例えば監督がデザイナーだとしますと、私はペインターですよね。壁に何色を塗るのか、どう塗っていくのか。そこには監督の指定があって、私はとにかく指定通りに仕上げていくという。

――バクヤッというキャラクターの哀愁を見事に表現されていたと思います。

脚本を読んだ時に少し不安だったのが、バクヤッは老いぼれみたいな老人ですよね。病気も抱えていて、とにかくひどい状態にある。どうやってこれを演じるのかなと思ったんですけれど、演じ終わってみると、とても自然に出来上がっていたなと思います。メイクのおかげで役柄になりきることが出来ました。

撮影現場で、私はモニターをチェックすることは無くて、それは完成した映画とは結局異なるため見てもあまり意味がないと。なので、完成した映画を見たときには、もうびっくりしました。外見だけではなくて、老人特有の白内障を患っているような、目の感じも出ていましたね。自分の母が亡くなる直前の姿を思い出しました。ある時「ポストプロダクションで目にCG加工などをしたのですか?」と聞かれたこともあるのですが、そんな予算はありませんでした(笑)。あれは実際の私の目なのです。

――素晴らしいですね。私は、この映画を観て、『白日青春-生きてこそ-』というタイトルの“生きてこそ”という邦題が効いているなと感じました。

生きてこそ未来はあるというのは当然のこととして、どんな未来が待っているかということが大切になります。我々の様にドラマや映画を作っている人たちは、 夢を作ってるわけですよね。夢を作って、皆さんに売る。作り手として良い未来を期待させる様な作品を届けることは良いことだと思っています。

――アンソニーさんはこれまでたくさんの作品に出演されてきました。本作のバクヤッの様な人物を演じたことで、さらに色々な役柄を見ることが出来そうで楽しみです。

僕の役者人生の中で、42歳から50歳のこの期間はですね、色々な映画に出演し、知名度も上がっていて、自分で言うのも変なんですけれども、割と、輝かしい時期なんですよね。仕事に関してはすごく楽しかった、けれど自分自身としては今の方が“楽しい”のです。
私にとって楽しいとはどういうことかと言いますと、「自分自身が今楽しんでいることを知ること」なんです。今緑茶をいただいていますが、美味しくてとても幸せです。もしそこにたくさんの金箔を振りかけられたら、周りの人は「豪華なお茶なのできっと幸せなはずだ」と思うかもしれません。でも僕は金箔無しのお茶を飲んでいる時の方が幸せなわけです。幸せや楽しさというのは周りが決めることではなくて、自分自身がどう思っているかが大切なのだと思います。

――おっしゃる通りですね、とても素敵な言葉をありがとうございます。

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情報提供元:ガジェット通信
記事名:「孤独な老人と難民の少年が心を通わすヒューマンドラマ『白日青春-生きてこそ-』アンソニー・ウォン インタビュー