夜と朝のあいだ、さよならできないふたり。真面目だがどこか物憂げな青年と、破天荒なほど行動的な女性が徐々に惹かれあっていく様を描く『夜のまにまに』が公開中です。
『グッドライフ』『きみはいい子』『ちはやふる』シリーズなど子役から活躍し、『仮面ライダーガッチャード』加治木涼役でも注目の加部亜門さんと、『猫は逃げた』『SUPER HAPPY FOREVER』『ココでのはなし』『走れない人の走り方』など多数の主演作が公開されている山本奈衣瑠さんがW主演を務める本作。前作『凪の憂鬱』が第37回高崎映画祭で新進監督グランプリ・最優秀新進俳優賞(辻凪子)を受賞し、国内外の映画祭で注目されている磯部鉄平さんが監督を務めています。
加部亜門さんと山本奈衣瑠さんのお2人にお話を伺いました!
――本作とても楽しく拝見させていただきました!撮影で特に印象に残っていることはどんなことですか?
山本:とにかく寒くて。でもちゃんと楽しかった撮影でした。外の撮影が多かったので、とにかく冷えて。私はまだしっかりしたコートにマフラーだったので助かっていましたが、亜門くんは寒そうだった!
加部:冬にギリギリ成立するくらいの薄着でしたね。辻凪子が言っていたのですが、磯部監督が暑がりだから冬の撮影だそうです(笑)。
――キャストさんは大変ですよね…!冬だから空気が澄んでいるのもあると思うのですが、こんなに人がいない、二人だけの夜の道の映像が撮れるんだって感動しました。
加部:本当に人がいない時間帯に撮っていたんですよ。夜中にずっと撮影して、明け方にホテルに戻って朝6時に寝るみたいなロケでした。
山本:この『夜のまにまに』というタイトルにピッタリな時間というか。この世界には自分たちしかいないと錯覚してしまう様な撮影でした。シンプルに人がいないですし、街も静かだし、物語の舞台と同じく夜に撮るという意味がすごくあるなと思いました。夜ってさ、あまり大きな声が出せないから。
加部:寒いのもあるけど、夜中ということもあって声が抑えめになることで、新平と佳純の距離感が近くなるというか、映画の雰囲気を作り上げてくれているなと思いました。
山本:夏だったらまた絶対雰囲気が違ったもんね。ビールかココアかみたいな。そのくらいの違いがあると思います。
――実際の夜中というシチュエーションも映画の雰囲気を作ってくれたのですね。お2人は本読みが初対面ということですが、第一印象と撮影を経てそれが変化していった部分はありますか?
山本:磯部監督の映画作りのスタイルであるそうなのですが、台本が出来ていない部分があったので、本読みの時は自分のことでいっぱいいっぱいで、亜門くんとほとんどお話しませんでした。それは私だけではなくてみんなもそうで、出来ることは今やっておこう!みたいな状況で。そんな中で亜門くんは良い意味でクールというか、フラットに準備を進めている印象がありました。
クランクインして、現場に行ったら、みんながすごく楽しそうに撮影していたから、少し緊張したのですが、亜門くんがたくさん話しかけてくれたので安心して。本当に頼もしい人です。もうなんか全部やってくれるので、あとをついていってる感じでした。
加部:そうだったかなあ?
山本:私が結構雑魚なので(笑)、本当に助けられていましたよ!
――映画の中だと佳純さんがどんどん前に進んでいっちゃいますけれど、撮影だと亜門さんが引っ張っていったのですね。
加部:でも(山本さんも)自由ではあったと思います。
山本:それを笑ってくれるし、「そっちに行ったら危ないよ」みたいに注意もしてくれるしありがたかったんです。
――新平と佳純いうキャラクターをどうとらえていましたか?
加部:本読みした時に見ていた台本と、撮影するタイミングでいただいた台本が全然違ったのですが、基本的に新平は受け身の人だなと。佳純さんがどんな行動をしてきて、それに咄嗟にどう対応するか、その場で(芝居上に)出るものがメインになるキャラクターだなと思っていました。
山本:猪突猛進な子だなとは思いましたが、台本を読んでいると「なぜそういう行動をするのか」とういことは理解出来たんです。「恋人のことがとにかく大好き」というシンプルな気持ちだけに突き動かされていて、それがちょっと激しすぎてああいうことになっちゃっているんだなと。でも、試写で完成した作品を観た時に「すごい人だな」とは思いました。大阪で先行上映遠した時もお客さんの感想で「佳純の破天荒さが、最初は嫌いになりそうでした」という声もいただいたんです。私もそうだよなと思いました(笑)。演じている時は全くそんなこと思ってなかったし、「私は正しいんだ」というピュアな気持ちでいたんですけれど、なかなか個性的な子ですよね。
――完成した映画をご覧になって、佳純さんにビックリしたわけですね。
山本:なんかすごい新平を振り回しているぞみたいな。でもやっぱり物語を通してみていくと、自分の気持ちにすごくピュアな人だなと思えるんです。
加部:新平は刺激がないまま生きてきた人ですけれど、突然、佳純という隕石が降ってきちゃったみたいな感じですよね。監督からは特に指示が無く、芝居についてはおまかせしてもらっていたのですが、監督はモニターの前でずっとクスクス笑っていて。監督にとってはちゃんと面白くなっているんだなという安心感と信頼がありました。
山本:私も、自分のシーンではないんですけど、モニターを見ている監督が笑っていることがすごく安心材料になっていました。新平と佳純が出会って、映画を観たあとに居酒屋に行くシーンを何テイクか撮っていたのですが、(加部さんが)毎回違うことを言っているのがすごかった。
――加部さんのアドリブなのですか?
加部:次のセリフが来る、“間”に思いついたことを言っていた感じなんです。
山本:ちゃんと面白いこと言っていてすごいなって。
――今日お話を伺っていて、お2人の雰囲気がとても柔らかくて、素敵な現場だったのだろうなと想像出来ます。改めて共演者がお互いで良かったなと思うことはどんなことですか?
山本:この映画は 2022年から撮影をしていて、佳純はオーディションでいただいた役かつ、まだ演技の経験がほとんど無い時期だったので、すごく緊張していたんです。台本がギリギリまで来ないという、“磯部組あるある”を(笑)、周りの皆さんは上手に対応出来るのだと思うのですが、私は全然対応出来ていなくてバタバタしちゃっていて。その時に亜門くんが「大変だよね」という共感と「頑張ろうね」という頼り甲斐を両方見せてくれて。何よりも「楽しいね」という気持ちを共有出来たことが最高に嬉しかったです。
加部:(山本さんは)僕が欲しかったものを全部持っていて。
山本:え!なんだろう!
加部:「私はこう思います」という自分の意見をその場で言えて、それを的確に説明出来て、なおかつ相手の意見を聞いて、「じゃあこうしようか」という中間地点を探ることがすごく上手で羨ましかったです。
山本:嬉しい。私が犬で、亜門くんが飼い主みたいな感覚だったんですよ。年齢は私の方が年上ですけれど、本当に1秒もそれを感じたことがないんですよ。あ、走った時の体力の違いは、やっぱり若いんだなと思ったんですけど(笑)。彼個人の、好きなもの、見ているもの、持っているものなど話が合うところもあったし、良い友達が出来たなと思います。
加部:今回すごく良いキャストの皆さんとご一緒出来て。みんなの他の作品が楽しみだし、観たいし、観に行くって思っています。
山本:そうそう。亜門くん以外とも、黒住くんとも凪ちゃんともそういう関係になれたと私は思っていて。この現場が終わった後にも、みんなの活動がすごく気になっています。応援しているという意味の気になっているなんですけど、またみんなで色々な話が出来たら嬉しいなと思っています。
――今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
撮影:オサダコウジ
ヘアメイク:夏海(加部、山本)
スタイリスト:青木 穣(山本)
山本 奈衣瑠さん衣装クレジット
タートルネックセーター¥15,400(ブラームス/ワンダリズム️03・5797・9915) その他は私物
『夜のまにまに』全国公開中
どこか人任せなフリーターの新平(加部亜門)は、幼馴染で彼女の咲と別れた日、訪れた映画館で佳純(山本奈衣瑠)と出会う。
意気投合し、夜の街で一緒に過ごす二人。
しばらくすると、新平のバイト先のカフェで佳純が働き始める。
再会に驚く新平だったが、佳純から“彼氏の浮気調査を手伝ってほしい”と頼まれ、探偵の真似ごとをする羽目に。
強引な佳純に振り回されながらも、新平は少しずつ彼女に惹かれていくが……
(C)belly roll film
情報提供元:ガジェット通信
記事名:「『夜のまにまに』加部亜門&山本奈衣瑠インタビュー「“この世界には自分たちしかいない”と錯覚してしまう様な撮影でした」」