ロシアによるウクライナ侵攻が始まって半年が経とうとしているが、本作はまさに今観るべき映画の一つだ。

戦争の最中ではなく戦争が終わってからの物語を描くことで、戦争が残す深い傷跡を観る者にリアルに伝える。

主人公は第二次世界大戦後のソ連で生活する若い2人の女性。

女性兵士として従軍したイーヤは、終戦直後のの病院においてPTSDによる発作を抱えながらも健気に看護師として働いている。

ある日、彼女の元を戦地から帰還した戦友のマーシャが訪問する。

一見イーヤより快活で積極的な性格に見えるマーシャだが、彼女も実は戦争による癒えない心の傷を抱えていた。

2人とも自分なりに息をして未来に向けて懸命に今を生き抜こうとしているが、終わったはずの戦争はまだ彼女たちから大切なものを奪い続けていく。

主演する2人の新人、ビクトリア・ミロシニチェンコバシリサ・ペレリギナが素晴らしい。

その繊細な表情、堂々とした振る舞い、新人俳優とは思えない存在感だ。

映画全体を通して、赤や緑などの色が鮮やかに対比され、中世の絵画のように明暗が強調される。

表情のアップ、人物の配置、無言で緊張感が張り詰めるシーン、それら全てが観る者を単なる傍観者で終わらせないような映画の圧倒的な力に繋がっている。

『燃ゆる女の肖像』『4月の涙』といった女性2人の絡み合う美しさや、戦争の悲劇に向かい合う女性の強さを描いた傑作を思い出したりもした。

戦後の苦難の時代を希望を捨てずに前を向いて生きる女性たちは強く美しい。

そして、そんな女性たちを戦後もなお苦しめ続ける戦争の罪深さは計り知れない。

まさに戦争の罪の大きさ・傷の深さを、息をのむような美しさの中に閉じ込めたような作品だ。

 

© Non-Stop Production, LLC, 2019

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記事名:「【レビュー】戦後の苦難を生きる女たちの姿を通して見えてくる戦争の顔―『戦争と女の顔』