
結局、旅先でいちばんしたいことって、有名な観光地に行くでも映えるご飯を食べるでもなく、その土地のなんてことない生活を覗かせてもらうこと。「地元の人が通う」なんて文字に惹きつけられるのは、きっとそのせいだと思う。であるなら、あの地元民に教えをこうて、普段着のあの街を案内してもらおう!ってことではじまった不定期連載。
第一回目の案内人は、日本のレゲエシーンを牽引してきたJUN 4 SHOTさん(以下、JUNさん)。彼のホームタウンは、神奈川屈指の観光地である横浜・中華街。それでは、あなたの街の歩き方を教えてください!

1975年生まれ、神奈川県出身。1997年にレゲエグループ「FIRE BALL」を結成し、2002年にメジャーデビュー。現在は中華街にある自身のショップ「RAGGACHINA」のディレクターや、同じく中華街にある「民生炒飯」にてオーナーを務めている。
Instagram:@jun4shot
中華街にも、濃密なローカルはあります!
派手な門に中国語の看板、食べ歩きの列、そして観光客の喧噪——。このへんが、多くの人がイメージする横浜・中華街だろう。一方で、この街にも人は住み、彼らが通う場所がキラキラ輝くネオンのそばに、潜んでる。
幼少期から、この街で過ごしてきたJUNさん。いまも経営するショップやオフィスは中華街にあり、かれこれ50年近くも街を見続けている。青春時代にスケボーで転んだ公園があって、レゲエに出会ったクラブがあり、いまも馴染みの店がいたるところにある。ガチのローカルが中華街で通う場所へ、いざ!
SPOT 01|RAGGACHINA
JUNさんのお店でランデブー。

住所:神奈川県横浜市中区山下町32−13 1F
電話:045-651-9018
Instagram:@raggachina
中華街から少し外れた路地にあるショップ「RAGACHINA(ラガチャイナ)」が、本日の待ち合わせ場所。JUNさんが手がけるファッションブランドの直営店であり、彼のすべてが凝縮した場所だ。店に着くなり、JUNさんがお出迎えしてくれた。今日はよろしくお願いします!

「まず、ここから見てもらおうと思って」と言いながら、JUNさんが店内を案内してくれる。ラックを埋めるのは、自身がディレクターを務めるブランド「IRIE Fishing Club」のアパレルと雑貨。3レイヤーのジャケット、フィッシュグリップ、リールのネックレスなど、釣り好きであるJUNさんだからこそのアイテムが揃っている。釣りで使用できる機能性とストリートで育った彼のセンスが滲み出ていて、タウンユースとしても普通にかっこいい。
「海と町の垣根を取り払える服を作りたかった。釣りに行ったまま、そのまま街に行けたらいいよねって」。いまでこそ、“街と自然を行き来する系”ブランドは多いけれど、JUNさんがこのブランドをはじめたのは2014年のこと。先見の明がハンパないのです。




もともとは中華街の中に店を構えていたが、2019年ごろに現在の場所へ移転。現在は卸売はいっさい行わず、この直営店とオンラインのみでアイテムを購入することができる。オシャレなあの人への中華街土産にも、最適ってわけです。
JUNさんと中華街の関係って?
「そろそろ行きますか」のJUNさんの合図で、街ブラを開始。こっちは中華街経験が少ないためキョロキョロしてしまいマップとにらめっこだけれど、さすがはローカル。迷いなく歩を進めていく。
そもそもJUNさんと中華街って、どんな関係なんですか?

「ちょっと離れた場所に住んでたんですけど、おじいちゃん、おばあちゃんの家が中華街の中にあったんで、よく通ってたんですよ。中学の頃からはスケボーやりに山下公園に行ったりね。それがFIRE BALLのスタートでもあったりするんです」
そう。JUNさんといえば、日本のレゲエ史に名を刻むFIRE BALLのメンバー。その面々と中華街で、夜までスケボーに明け暮れていた。
「いまでは考えられないですけど、寛容な時代だったのでクラブにも出入りしてたんです。そこで流れていたのがレゲエだった。もし、ハードコアが流れてたら、みんなでハードコアのバンドをやっていたかもしれないですね(笑)」

衝撃を受けたJUN少年は、そうしてレゲエのキャリアをスタートさせることに。授業中にリリックを書いては、土日になると中華街へやってきて、クラブのオーディエンスの前で披露する日々を送っていた。
そのクラブはなくなってしまったし、街もキレイに整えられてしまったけれど、ここはJUNさんの青春が詰まった場所であり、紛れもなくホームタウン。
SPOT 02|HARE-TABI SAUNA & INN
汗を流せば、この街がもっと好きになる。
「RAGACHINA」から歩いて5分ほどで辿り着いた「HARE-TABI SAUNA & INN」。中華街にあるサウナ&カプセルホテルだ。

住所:神奈川県横浜市中区山下町216 3階
電話:045-306-7102
Instagram:@hare_tabi
「昔は、ほぼ毎日サウナに行ってたんですよ。普段から代謝を上げていないとライブで疲れてしまうんで、そのために」
いまは以前ほど頻繁ではないまでも、サウナは生活に根付いている。また、横浜にはいいサウナがたくさんあって、最もホットなのがこの施設。


内装も港町の横浜らしい。赤煉瓦をモチーフにしたカラーと、インダストリアルなインテリアは、なんとも落ち着く。
肝心のサウナはというと、男性用サウナはオートロウリュによる高湿度のセッティングが特徴で、しっかり発汗できる(女性用はセルフロウリュ)。外気浴はないまでも、ゆったりしたイスの上には扇風機がまわり、休憩中も優しい風が肌をなでていく。

もっともユニークな点が水風呂だ。中華街の漢方薬局と連携し、約15種類の漢方を配合。肌の表面は冷やしながらも、身体の芯はあたたかいままの状態が期待できるのだとか。

カプセルホテルのベッドには「昭和西川」のMuAtuマットレスを採用。豪華寝台列車をイメージした内装になっている。ライブやイベントで遅くなったときの逃げ場としても最適だ。
東京都心のホテルは高騰の一途をたどっている。渋谷で窮屈な部屋に数万円払うなら、こっちでアンダー1万円で泊まるのもいいかもしれない。特急に乗ってしまえば、渋谷から40分で着いちゃうし。
心身ともに整えたら、次は本場のカルチャーを味わえる場所へ!
SPOT 03|悟空茶荘
NO MUSIC, NO LIFE。20年越しのポスターが待っている!
サウナで整えた体で、中華街のメインストリートをひとつ外れた路地へ。重厚な木の扉を開けると、異国の時間が流れている。お茶屋さんの「悟空茶荘」だ。

住所:神奈川県横浜市中区山下町130
電話:045-681-7776
Instagram:@goku_teahouse
「中国だと、なにかあれば、とりあえずお茶を飲んでタバコを吸うってのがお決まり。仕事で中国に行ったときも、8時間のうち6時間くらいはお茶の時間ってこともあります。そのくらい、みんなお茶が好きだし生活の一部にってるんです(笑)」
現在は仕事で中国に通うJUNさんだけれど、19歳から24歳までは中国で暮らしていたこともある。中国人の作家と共同生活をしながら、語学を学び、バーでDJをし、気づけばパーティ三昧の日々を送っていた。内モンゴルや万里の長城の上でパーティを主催したことも(以下の動画がソレ)。そんな中国での暮らしを経ているから、お茶の文化も骨の髄まで染み込んでいる。




席に着くと、小ぶりな茶器が次々と並べられお湯が絶え間なく補充される。茶葉を蒸らし、温め、少量ずつ注いで飲む。それが永遠に続いていく。「こうしてチマチマやって、しゃべってっていうのを、ずっと繰り返すんです。本場はもっと雑多な感じなんですけど」

1階では茶葉の販売もしているのだけど、そこでJUNさんが思わず「うわっ!」と驚く。視線の先には、一枚の古びたポスター。「NO MUSIC, NO LIFE」——その文字が中国語で書かれていて、若き日のFIRE BALLの姿があった。約20年前のものらしい。「この店のおじいちゃんが音楽をやる人で、撮影場所を聞かれたときにここを指定したんです。いや〜、懐かしい!」
1階の右奥、お店へ行った際はチェックよろしくお願いします。
SPOT 04|横浜関帝廟
中華街に住む人たちのモーニングルーティーン。
中華街を歩けば一度は目にする、極彩色の彫刻が施された門。線香の煙が、境内にもうもうと立ち込める。

住所:神奈川県横浜市中区山下町140
電話:045-226-2636
HP:yokohama-kanteibyo.com
「横浜関帝廟」は、この街の信仰の核と言っていい。1871年に創建され(現在の社殿は1990年再建)、三国志でも知られる商売の神様・関羽が祀られている。
「毎朝、必ずお参りに来るんです。なんのお願い事もしないけど、ここにいることをただ感謝するんです」とJUNさん。
中華街に住む人たちにとって、関帝廟での朝の参拝は「当たり前」なのだという。たしかに、朝この前を通ると、門の外で手を合わせる人たちを目撃する。家や店にも関羽様を飾っているところも多い。




参拝の作法は、日本の神社仏閣とは少し違う。まずは巨大な線香を購入し火をつけたら、天の神様(天公)に礼をし、各香炉の前で線香を一本ずつ手向ける。「で、自分の名前、住所を唱えて、あいさつをする感じ」。参拝の仕方は境内にも飾ってあるので確認を。

参拝すると、この赤いカードをゲットできて、JUNさんはお財布にお守りとして入れている。この関羽様がなかなか迫力があり、たしかに、変な災厄は遠ざけてくれそうだ。
SPOT 05|美楽一杯
知ってても辿り着けない。それが、本物の地元飯。
晩餐の前に、JUNさんが経営するチャーハンの専門店「民生炒飯」に立ち寄った。台湾で大人気のチャーハン店で、鍋を振るシェフも本国で修行済み。パラパラでふっくらしたチャーハンは、お世辞を抜き美味。あっさりしながらコクがあり、ひとくち食べるともう止まらない。

ピックアップを無事に済ませたら、こちらもまた、味がありすぎるビルの前にたどりつく。「いい感じでしょ?」と笑いながら、怪し気な入り口を通り、狭いエレベーターに乗ると、その店は現れる。

住所:神奈川県横浜市中区山下町202 チャイナタウンビル 4F
時間:17:00-24:00
電話:045-641-0812


「いつもは食べたあとに来る」というけど、この日は早めの到着。店内はもう、本場も本場だ。ドが付くローカル。観光客でここへ来る人は、まずいないだろう。夜までやっているから、この辺で働くコックたちの溜まり場でもあるらしい。
「昔から通ってますね。10年以上になるかな。FIRE BALLの時代も、夜遅くになって『どこ行く?』ってなると、だいたいここでした」


必ず頼む一品は、あさりのトーチ蒸し。蒸した浅蜊に、発酵した豆豉の香りが絡む。ほかにもスペアリブも絶品だったし、ゴーヤの炒め物なんかも酒の肴にもってこい。
観光マップには載らない、地元民だけが知る顔。こういう店が、本当の意味での「中華街の食文化」を守っているのかもしれない。華やかな観光地の裏側で、ひっそりと。
ガイドには載らない、俺だけの中華街。
外に出ると、もうすっかり暗くなっていた。昼の喧騒は嘘みたいに、静かな街がそこにはあった。 一日歩いてみて、改めて気がついたこと。それは、横浜・中華街は、テーマパークじゃないってこと。人の人生が、何代にもわたって積み上がった、ぶ厚い街だった。
次にこの街を訪れるとき、きっと見え方が変わっている。食べ歩きの列も、派手な門も、同じように目に入るだろうけど、その路地の奥に、毎朝手を合わせる人がいることを、深夜に仲間と流れ込む店があることを、20年前のポスターが今も壁に貼ってある茶荘があることを、もう知っている。
それだけで、旅はちょっと豊かになる。ありがとうJUNさん、ありがとう中華街!

Photo/Shouta Kikuchi
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情報提供元:GO OUT
記事名:「観光では見えてこない横浜・中華街を、JUN 4 SHOTがナビゲート。【Local Tour #1】」












