人間と他の動物たちの共存--それが決して簡単ではないことは、これまでの歴史が示しています。文明は、人間を自然界から突出した存在にさせ、この惑星が全ての生物にもたらす恩恵を偏らせてしまいました。
イギリス・ブリストルに拠点を置く野生動物と自然の専門フォトエージェンシー、Nature Picture Library(ネイチャー・ピクチャー・ライブラリー)社には、世界中のネイチャーフォトグラファーから日々写真が届きます。この記事は、そんなネイチャーフォトグラファーたちが写真の力で、野生動物の世界に起こっているさまざまな現実を伝えたものです。
Nature Picture Libraryのすべての写真はこちら
文 :伊藤章彦
(アマナイメージズ『Portfolio by amanaimages』編集部 エディター)
出典:Nature Picture Library Feature Stories;
“Gorilla Guardians”, “Wildlife ER”, “Elephant Orphans”より
写真:Nature Picture Library / amanaimages
1, ウガンダ 人とゴリラの健康には関係があった
絶滅の危機に瀕しているマウンテンゴリラ。実は彼らを救う最善の方法が、「人々の健康を改善すること」なのです。それってどういうこと?
アフリカ大陸の内陸国・ウガンダの原生林「ブウィンディ国立公園(Bwindi Impenetrable National Park)」。1991年に世界遺産に登録されました。そこで活動する野生動物の獣医、グラディス・カレマ・ジクソカ博士によれば、多くの人が動物から人間への伝染病感染ばかりを懸念しますが、実際にはその逆もまた発生しているそう。少なくともブウィンディのゴリラにとって致命的な病気は、実は人からゴリラへと感染していたものだったのです。
そこで博士は、より良い衛生と栄養を通じて、人々とゴリラの「両方の健康を改善すること」に焦点を当てた独自の保全対策を開始。徐々に状況の改善に成功しています。人間とゴリラの健康状態はともに改善し、さらに野生ゴリラの鑑賞をする観光ツアーによる収入が、地域コミュニティを貧困から救い出す助けにもなっています。
2, オーストラリア 野生動物の命を救う人たち
さて、ER/救急救命が必要なのは、何も人間に限ったことではありません。オーストラリアのクイーンズランド州ゴールドコーストにある「カランビン・ワイルドライフ自然保護区(Currumbin Wildlife Sanctuary)」の野生動物病院では、実に毎年およそ14,000 頭の動物を受け入れています。
多い日では 70 ~ 90もの「患者」を診察しているこの病院は、30年以上にわたり、獣医、看護師、ボランティアによって支えられてきました。
病気、怪我、また孤児となってしまった在来動物の治療に携わり、休まることのない忙しさだです。もし山火事や干ばつなどの気候変動による地域への影響が出れば、加えてやけど、飢え、脱水症状、熱ストレスなどに苦しむ動物たちが医療をもとめて流れ込んで来ます。救急救命で救える動物の命がそこにある限り、病院が休まることもありません。
3, ケニア トラウマを抱えたゾウの孤児院
気候の影響といえば、干ばつは多くの動物たちにとって深刻な問題です。アフリカ大陸の東側、ケニア共和国では、干ばつに加えて密猟のため、孤児となってしまったゾウの数が過去 2 年間で実に 8 倍に増加しました。
ナイロビにある「デイビッド・シェルドリック動物孤児院(David Sheldrick Wildlife Trust)」は、そんな母親から引き離された象の孤児の世話をしています。
野生動物の撮影を専門にする写真エージェンシー、Nature Picture Library(ネイチャー・ピクチャー・ライブラリー)の写真家、リサ・ホフナーは、ゾウの孤児院の様子を、数年にわたって記録してきました。その写真群には、トラウマを抱えた若いゾウを最終的に野生に戻すことができるよう、飼育係が献身的にリハビリを行う様子が写し出されています。
本コラムの写真は、すべてNature Picture Libraryのコンテンツで作成されており、ここで掲載していない写真、また出典となっている原文ストーリー(英文)まですべてを、アマナイメージズからご提供が可能です。お気軽にお問合せください。
歴史ある街並みと自然とが調和を見せる、イギリス西部の港湾都市ブリストルにあるNature Picture Library(ネイチャー・ピクチャー・ライブラリー)。こぢんまりしたオフィスのドアを開くと、スタッフが(筆者を)あたたかな笑顔で迎えてくれました。そして、そこで目にする野生生物をはじめとして自然界の多彩な表情をとらえた写真は、他にはない訴えかけるチカラに満ちています。
自然保護の重要性を強く信じるNature Picture Libraryには、真のプロフェッショナルたちが揃い、そして世界中から野生動物の撮影を専門にする写真家たちが集まり、世界有数のコレクションが今も日々蓄積されつづけています。
野生動物、自然界の写真ライセンス事業を通じて、四半期毎にさまざまな保護慈善団体に寄付も行いながら、自然保護活動に貢献しているNature Picture Libraryの写真。これらを、あなたの記事や書籍、広告で使用することができます。日本での使用、許諾、リサーチは、ビジュアル権利の総合カンパニー・アマナイメージズまで。
Nature Picture Libraryのすべての写真はこちら
教科書・教材用の専門的な素材をお探しなら、アマナイメージズにお任せください。
情報提供元:PORTFOLIO
記事名:「ネイチャーフォトが伝えられること〜野生の姿を守る人たち」