【ほしのうつつ】雨運のはなし

本エッセイは、ライター・HOSHIさんによる文章と、アマナイメージズ クリエイティブディレクター・松野正也によるフォトキュレーションでお届けします。

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人の味覚は面白い。

初めて食事を行く人に「嫌いなものある?」と聞くのは定番の質問だが、そもそも人それぞれに「嫌いなもの」があること自体がとても面白い。

幸い私には嫌いなものが一つもない。食べもの大好き。だからこそ、「◯◯が嫌いなのよね」のそれぞれの嫌いな理由を聞くたびに、そうきたか!と笑ってしまう。

「ナスが嫌いなのよね、つぶつぶしてるから」つぶつぶ?してるかなあ。

「トマトが嫌いなのよね、じゅるじゅるしてるから」んー、でもじゅるじゅるしてる食べもの、他にもたくさんあるような…。

「きのこが嫌いなのよね、ぐにぐにしてるから」ぐにぐに?感じたことなかった。

ピーマンは良いけどパプリカは嫌い。トマトは嫌だけどプチトマトなら食べれる。エリンギは好きだけどしめじは無理。

嫌いなものの、嫌いな理由が、本当に繊細すぎる。自分にはない感覚で、みんなはそれを嫌いだと言う。

友人とご飯に行った折、店選びに大変時間がかかって、話し合いのために一度、喫茶店を挟んだことがある。友人は野菜も生魚も肉も揚げ物も食べられなかった。困った困った。

世の中には、その身体は一体何で栄養をとってきたんだろう?と思う人がいる。少ない栄養素で同じ体が作られるって、人間もなかなかすごいなと感心する。

結局、「カレーの中に煮込まれてたら食べれるんだよね」の一言で、その日はカレーを食べに行った。友人はとても美味しそうに食べている。

生まれ変わったら、一度嫌いなものがある人間になって味わってみたい。

ナスのつぶつぶも、トマトのじゅるじゅるも、きのこのぐにぐにも分かる、その研ぎ澄まされた味覚を持ってみたら、目の前のこのカレーを、実はもっと美味しく感じるのかもしれない。

 

 

情報提供元:PORTFOLIO
記事名:「【ほしのうつつ】嫌いな食べもの