BSI(英国規格協会)、水問題に関する国際調査を実施
本レポートでは、一般に公開されている各国のデータと、世界9ヵ国の9,300人以上を対象とした意識調査を組み合わせて、これらの国々において水不足がどのように認識されているかを評価しており、その結果、直面している課題の現実、その深刻さに対する国民の理解、そして状況を好転させるために必要な行動の間に著しい乖離があることが明らかになりました。
・2024 BSI / Waterwise Water Security Indicator (BSIおよびWaterwiseによる水セキュリティ指標2024)によると、調査対象国の約3分の1で2023年よりも水の確保が困難となっており、44%の国々では変化が見られませんでした。
・この調査をまとめた第2回「変化への渇望」レポートによると、スペインとトルコにおける水不足の深刻化が懸念されています。
・調査対象41か国中、2023年に比べて評価が上がったのはスウェーデンとスイスを含むわずか9か国でした。
・世界9ヵ国の9,300人以上に対して行われたアンケートでは、政治家が水セキュリティについて定期的に話題にしているのを目にすると回答したのは6人に1人だけでした。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/415277/LL_img_415277_1.jpg
BSI(英国規格協会)、水問題に関する国際調査を実施
回答者の60%が水セキュリティを世界的な重要課題として認識し、76%が自国における干ばつを課題として挙げているにもかかわらず、水セキュリティへの取り組みは気候変動への取り組みと同様に重要であると回答したのは45%と半数以下でした。また、この意識調査では、水セキュリティが政治家やメディアによって定期的に議論されていると答えた人は世界全体でわずか15%にとどまりました。現実には1900年から2024年の間に世界全体で年間水使用量が約3兆5,000億立法メートル増加し1、気候変動によりさらに悪化することが予想されています。言い換えると、毎秒895立法メートルの水が消費されていることになり、国際大会で使用されるプールと同じ容量(2,500立法メートル)が2.79秒ごとに1杯分必要になることを意味します。
世界の水需要は、年間約1%、または4,000億立法メートル増加すると予測されています。この予測を基に行われた新たな計算では、世界の水需要は1秒あたり1,268立法メートル増加する可能性があり、これは2秒でオリンピックサイズのプールが1杯になることを意味します。
2024年の水セキュリティとソリューション指標では、中国、インド、米国はいずれも85点満点中50点を超えており、最大の課題に直面している一方で、解決の面では限定的な進展にとどまっていることが分かります。それに比べ、意識調査のデータは、世界の水セキュリティの課題に対する現実と、その問題の大きさに対する一般の人々の理解との間にギャップがあることを示唆しています。自国の淡水供給に自信があると答えた人は全体で74%であり、インドは85%、オーストラリアは82%、米国は73%でした。
水セキュリティに関する課題のスコアが最も上がった(悪化した)のはスペインで、昨年から5ポイントも上昇しました。これは、同国の利用可能な淡水の内、汲み上げられる水の割合が増加したこと、国内GDPに対する水の価格が下落したこと、そして水の使用効率が低下したことが原因です。このスコア上昇は、2024年2月にカタルーニャ州政府が干ばつ非常事態を宣言するなど、スペインがここ数年直面している水不足の課題を考慮すると、特に深刻です。2024年の深刻な水不足を反映して、調査対象41カ国のうち13カ国は前年に比べてスコアが上昇しました。これにはトルコ、北マケドニア、オランダ、ベルギー、アジアでは中国、インド、日本が含まれます。
水セキュリティの改善を示す2023年比のスコアの減少は、概して大きなものではなく、スウェーデン、スイス、スロベニア、ノルウェーなど9カ国のみでした。
ポジティブな点を見ると、半数以上(53%)の人々は行動の必要性を認識しており、個人レベルで水の無駄使いを減らし、水セキュリティを促進するための行動を起こすことが重要であると回答しています。一方で世界全体では73%が、製品に水使用量ラベルを導入することに賛成しており、これには実行可能な解決策を求める強い要望が反映されています。同様に、3分の2以上(68%)が水効率に配慮しているブランドにはより多くのお金を使うことに前向きであり、3分の2(67%)が、より多くの費用がかかっても、水使用量の少ない素材(リサイクルコットンなど)を使用した商品を購入すると回答しています。
BSIの最高経営責任者(CEO)であるSusan Taylor Martinは次のように述べています。「水が安心して手に入る世界に向けての進歩は見られるものの、理解と前向きな変化を促進するためには、まだやるべきことがたくさんあります。まず、この課題の規模を認識し、それが気候変動や持続可能性に関するより幅広い議論にどのように当てはまるかを把握することがスタートです。そこから、政治家や指導者は行動への道筋を整えることができるでしょう。
これひとつですべてが解決するような方法はありませんが、今日からでも私たちは行動を起こすことができますし、起こすべきです。水効率ラベルの導入から、消費者の選択肢の改善、医薬品開発における廃水管理の推進まで、さまざまな取り組みが考えられます。個人、組織、社会として、私たちは力を合わせて多くのことを達成することができます。BSIでは、個人と組織が協力し、真水の供給が需要の高まりに対応できる持続可能な未来の実現に向けて前進できると信じています」
WaterwiseのCEOであるNicci Russell氏は次のように述べています。「多くの人が解決の一端を担いたいと強く望んでいる一方で、世界が直面している水セキュリティに関する課題は依然として残っています。世界のほとんどの地域では改善が遅々として進まず、他の地域では水セキュリティに関する課題が急速に増大しています。今回の調査から明らかなことは、解決策の重要な要素は、家庭や職場において、今ある水を賢く利用することです。そうすることで、気候変動への適応をより確実なものとし、人々や企業への水の供給を確保し、環境を改善することができます」
世界的に見ると、英国人(21%)と日本人(15%)が、自国の水セキュリティレベルに対する理解に最も自信を持っていないことがわかりました。これは、政治やメディアの注目が十分でないことが影響している可能性があります。さらに、世界的に見ると、自国の水セキュリティを確保するためのインフラに自信を持てない人が4分の1を占め、最も自信を持っていないのは英国(32%)と日本(44%)でした。
BSIは本レポートの中で、メディアや政策立案者に呼びかけ、企業やその他の組織とともに、気候変動に関する議論に水セキュリティを取り入れることで、議論を促進し、認知を高めることを含む、具体的な行動指針を定めています。さらに、BSIは、水保全における消費者の意識を高め、市場の革新を促進するために、オーストラリアやシンガポールで義務化されている水効率ラベルのようなツールを通じて、消費者が情報に基づいた持続可能な選択を行うことを支援するよう促しています。
・2023年の「変革への渇望」レポートについてはこちら( https://www.bsigroup.com/siteassets/pdf/en/insights-and-media/insights/white-papers/bsi-thirst-for-change-final.pdf )
・最初の「水セキュリティ指標」は、こちら( https://www.bsigroup.com/siteassets/pdf/en/insights-and-media/campaigns/bsi_thirst_for_change_2024_data_final.pdf )のリンクからご覧いただけます。
参考文献: https://ourworldindata.org/grapher/global-freshwater-use-over-the-long-run
■評価方法について
BSI Water Security and Solutions Indicator 2024は、国別規模での水の利用を調査する高度な指標で、自治体および公共の水道供給に焦点を当てています。この指標は2つの要素から導き出されています。1つ目は課題に焦点を当てた要素です(水の入手、水の利用、水のリスク、水の浪費に関する公開データに基づく)。
2つ目は解決策に焦点を当てており、9ヵ国9,300人以上を対象とした世論調査から得られた、インフラの現状と国民の意識に基づいています。
課題のスコアが低いほど、その国における水セキュリティリスクのレベルが低いことを意味します。一方、解決策のスコアが低いほど、その国における解決策や前進への障壁が少ないことを意味し、すなわち、課題の対策に役立つ解決策を実施する上でよりよい状況にあることを意味します。
いずれも対象国間の比較を提示しており、水不足への対応が進んでいる国と、改善の余地がある国を、高いレベルで示しています。
■Waterwiseについて
Waterwiseは、人々と地球のために水の賢い利用を提唱する英国の主要独立系NGOです。Waterwiseのビジョンは、水を毎日、どこでも、誰もが賢く利用できるようにすることです。私たちは、人と地球を代表する、水の効率性に関する英国の良心であり、水の効率性に関する政策、規制、研究、行動、キャンペーンの専門家です。Waterwiseは従業員の福利を優先し、人材に重きを置く組織です。
■BSI(英国規格協会)とBSIグループジャパンについて
BSI(British Standards Institution:英国規格協会)は、ビジネス改善と標準化を推進する機関です。設立以来1世紀以上にわたって組織や社会にポジティブな影響をもたらし、信頼を築き、人々の暮らしを向上させてきました。現在190を超える国と地域、そして80,000社以上のお客様と取引をしながら、専門家、業界団体、消費者団体、組織、政府機関を含む15,000の強力なグローバルコミュニティと連携しています。BSIは、自動車、航空宇宙、建築環境、食品、小売、医療などの主要産業分野にわたる豊富な専門知識を活用し、お客様のパーパス達成を支援することを自社のパーパスと定めています。
気候変動からデジタルトランスフォーメーションにおける信頼の構築まで、あらゆる重要社会課題に取り組むために、BSIはさまざまな組織と手を取り合うことによって、より良い社会と持続可能な世界の実現を加速し、組織が自信を持って成長できるよう支援しています。
BSIグループジャパンは、1999年に設立されたBSIの日本法人です。マネジメントシステム、情報セキュリティサービス、医療機器の認証サービス、製品試験・製品認証サービスおよび研修サービスの提供を主業務とし、また規格開発のサポートを含め規格に関する幅広いサービスを提供しています。
URL: https://www.bsigroup.com/ja-JP/
情報提供元:@Press
記事名:「BSI(英国規格協会)、水問題に関する国際調査を実施 調査対象国のほとんどで水セキュリティに進展が見られず、危機に対する備えができていないことが判明 国民の理解と状況を好転させるための行動に乖離」