今月始めに迎えた二十四節気「立夏」は第三候「竹笋生(たけのこしょうず)」となりました。竹の子が生えてくる時期ということです。食材としての竹の子は3月頃から店頭にならび始めていますから、皆さんは大いに味わわれたことでしょう。竹の子は1日で1mも伸びてしまうこともあるほど、ほかの木々や草花に比べて成長が早いのが特徴です。それは何故? 知っているようで実はあまりよく知らない「竹」の不思議を探ってみましょう。


「竹」は木? それとも草? 実は…

竹は中が空洞になっており、これを「稈(かん)」といいそこに「節(ふし)」を持つところからイネ科に属します。この「稈」と「節」があることから木とも草とも違う「有節植物」という独自の呼び方がされているのです。
木でいう「幹」にあたるものが「稈」です。「幹」は細胞分裂をする形成層を持ち毎年成長して年輪をつくっていきますが、「稈」には形成層がないので太くなることはありません。それなのに樹木の何倍も早く成長することができるのは、成長点という細胞分裂を行う組織をすべての「節」が持っているからだということです。それぞれの「節」が縦に伸びていくとは、すごい成長の仕組みです。

竹の子ご飯や若竹煮などの料理で、縦に切られている竹の子を思い出してください。空洞が先端の細くなる方へむかって幅が狭くなりながら並んでいたことに気づくことでしょう。この時はまだ幼い竹の子ですから節と節の間が狭く、成長の途中だということがわかります。

竹の成長に必要な養分はどうやって供給しているのでしょうか。これも料理の竹の子を思い出してみましょう。輪切りにされた竹の子には、繊維がしっかりと通っているのが見えませんか。これが「稈」の中で管となって通っており、根から吸い上げた水分や養分を先端に向かって運び、葉で作られた養分を下へ送る機能をはたしているそうです。竹のしなやかさは真っすぐに通っているこの繊維によるものと考えられます。


いつ「竹の子」から「竹」になるの?

竹は大地の下に地下茎をのばして増えていきます。地下茎も竹と同じように「節」を持つ「稈」で、地中では横に伸びていきます。ひとつ置きの「節」には「休眠芽」がついており、これが伸びて「竹の子」になっていくということです。

さあ、この「竹の子」はいつ「竹」になるのでしょうか? ポイントは「皮」。「竹の子」とは「稈」に皮がついている状態とのことで、収穫した「竹の子」の状態と考えられるでしょう。皮は一つの「節」に一枚、成長が終わると「節」の下の部分から少しずつはがれていき、皮がすべてはがれたとき、「竹の子」から「竹」と呼ばれるようになるそうです。成長にしたがって、自然に「竹」へと変わっていくのですね。

この皮は成長のためには大変重要で、無理にはがすと「竹の子」の成長は止まり、腐ってしまうそうです。伸びていく「竹の子」の皮は、決して手ではがしたりしないように、竹林を散策するときなどは気をつけたいものです。

「竹」も他の植物と同じように花を咲かせ種を作りますが、花が咲くと「竹」は枯れてしまうということで、竹林全体で開花がみられた場合は林全体が枯れることになるそうです。
花の咲くタイミングは種類によってさまざま、まだその法則は充分に解明されていないということです。竹林の枯れを予測することはなかなか難しいようです。


身近にあった「竹」の魅力に注目したい!

ほんの50年くらい前は、竹で作られたものが日常生活の中でたくさん使われていました。
台所では笊(ざる)や籠(かご)、菜箸、巻き簾、へら。外では物干し竿に竹ぼうき、熊手、また庭の垣根など生活のあらゆる場面で利用され、一日として竹を手にしない日はなかったようです。

竹製品はいつの間にか手軽で色どり華やかなプラスチックに置きかわっていきました。これは工業化の波と新しい素材への興味の高まりがあったからと想像していましたが、それだけではないようです。
1950年から1960年頃、全国的に真竹が開花し一斉に枯れてしまったことで、材料が不足したのが一番の原因だったということです。竹の開花が遅れていれば、プラスチック製品への移行も、もう少しゆるやかだったのかもしれません。

現在では、自然環境をできるだけ保持していく考えからも、「竹」の魅力が大きく注目されてきています。自然素材である竹製品は、手入れや扱いがプラスチックなどにくらべると手軽とはいきませんが、かえって素材の持つ清潔感や温もりから愛着が湧き、大切に使い続けようという気持ちも育っているようです。日常使いから趣味の世界まで、幅広く豊かな生活を作り出していける「竹」を多いに利用していけたらいいですね。


参考:
内村悦三著『タケの大研究』PHP研究所

竹で作られた道具たち

竹で作られた道具たち