月の一部が地球の本影に隠される「部分月食」が、10月29日の未明から明け方にかけて起こります。日本国内で月食を観測できるのは、2022年11月8日の「皆既月食」以来、約1年ぶりのこと。
今回は月食のしくみと種類、観測のポイントをご紹介します。


地球の影のなかを月が横切る、ダイナミックな天体ショー

物や人に太陽の光が当たると影ができるように、地球も太陽に照らされると影ができます。太陽と反対側に伸びた地球の影のなかを月が通過する時に、月が暗く見えたり、欠けて見えます。これが月食と呼ばれる現象です。

月食は、太陽・地球・月が一直線に並ぶ満月の時に起こりますが、満月の時に必ず月食になるわけではありません。月の軌道面と地球の公転軌道面は5度ほど傾いているため、通常は影が北か南にずれており、地球の影から外れた場所で満月になることが多くなるのです。


月食の種類とは?「本影食」と「半影食」の違い

地球の影には、太陽光がほぼ届かない「本影」と本影を取り囲む「半影」の2種類があります。本影は暗く濃い影、半影は薄い影となり、月がどちらの影のなかに入るかによって、月食の種類が変わります。

一般的に「月食」と呼ばれるのは「本影食」のことで、月が暗い本影に入るため、月がくっきりと欠けたかたちに見えます。月の一部が本影に入る現象を「部分月食」、月の全てが本影に入り込む現象を「皆既月食」と呼びます。

「半影食」は、月の一部または全部が半影に入る現象。月が欠けたかたちに見える本影食とは異なり、半影は薄い影になるため、欠けているかどうかはっきりとわからない場合もあります。

画像:国立天文台

画像:国立天文台


「食の最大」は5時14分頃!わずかに欠けた月の姿を観測しよう

10月29日明け方に起こる部分月食は、始まりから終わりまでをほぼ日本全国で観測することができます。小笠原諸島など一部の地域では、月が欠けたまま沈む「月入帯食(げつにゅうたいしょく)」となります。

月食は全国で同じ時刻に進行し、4時34.5分から月は徐々に欠けていきます。最も欠けて見える「食の最大」となるのは5時14.1分。今回は、月の直径の12.8%が地球の影に入る、わずかに月が欠ける部分月食になります。その後、月は徐々に地球の影から抜けていき、5時53.6分に終了します。

多くの地域では、部分食が終わって間もなく月の入りに。終了間近の月の高度はとても低いため、西の空が開けた場所から観察するとよいでしょう。月の近くには明るく輝く木星の姿もあります。夜明け前のひと時、西の低空で起こる美しい天体ショーを楽しみたいですね。



・参考文献
『アストロガイド 星空年鑑 2023』 アストロアーツ

・参考サイト
国立天文台「ほしぞら情報2023年10月」
国立天文台「月食とは」

画像:国立天文台

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